写真の再現力や描写力、臨場感や立体感などを実現するために欠かせない、豊かで美しい「階調」を記録できるデジカメの必須条件について簡単に解説しています。
豊かで美しい「階調」を記録できるデジカメの必須条件とは、より大きなセンサーを搭載していることです。
その理由はシンプルです。
なぜなら、大きなセンサーほど、物理的に光をより多く取り込めるからです。
より多くの光を取り込めるカメラほど、豊かで美しい「階調」を記録することが可能です。
写真の再現力、描写力、臨場感や立体感など色調のクオリティーは、撮影で記録できるデータの豊富で美しい「階調」の質に依存しています。
僕は、写真(画像)のスキャニング、色調補正、画像編集の専門家です。
再現力・描写力・臨場感=豊かで美しい「階調」を記録できるデジカメの必須条件とは?
※ 以下の項では、センサーをイメージセンサーに統一して解説しています。
豊かで美しい「階調」を記録できるデジカメの必須条件は、大きなイメージセンサーを搭載していること
イメージセンサーが大きいほど、取り込める光の量が多くなる
豊かで美しい「階調」を記録できるデジカメの条件は、大きなイメージセンサーを搭載していることです。
理由はシンプルで、物理的にイメージセンサーが大きいほど光を多く取り込めるため、豊かで美しい「階調」を記録することが可能になるわけです。
カメラが記録する映像の情報源は「光」なので、光の量が重要なのは必然です。
ですので、カメラもレンズもより多くの光を取り込めるように設計するわけです。
これは、フィルムカメラでも同じです。
イメージセンサーとは、フィルムカメラのフィルムにあたる部品です。
下記はイメージセンサーを表した画像です。
イメージセンサー
取り込める光の量が多いほど、豊富で滑らかで美しい「階調」の画像を記録できる
明〜暗・淡〜濃の変化は、変化の<幅>が広いほど緩やかに変化するので滑らかで美しい「階調」になります。
「階調」の<幅>は、階段をイメージすると解りやすいと思います。
階段の最下段から最上段までの高さを、明〜暗・淡〜濃の変化とします。
上へいくほど、暗く・濃く(または、逆に明るく・淡く)変化していくイメージです。
そして、階段の縦方向の高さは変えずに、横方向の距離を伸ばしていくと、最下段から最上段までの一段づつの段差は小さくなっていき、やがては段差のない滑らかで緩やかな坂道になります。
逆に、階段の縦方向の高さは変えずに、横方向の距離を短くすると、最下段から最上段までの一段づつの段差は急激になっていきます。
この横方向の距離が、「階調」の<幅>にあたります。
大きなイメージセンサーと小さいイメージセンサーを搭載したカメラとの差とは、この「階調」の<幅>にあります。
大きなイメージセンサーを搭載したカメラは小さいイメージセンサーを搭載したカメラよりも、「階調」の<幅>が広く、明暗・濃淡が緩やかに変化していく、豊富で滑らかで美しい「階調」を保持した画像を記録することができるというわけです。す。
このデータが持っている「階調」の幅の違いは、実際に画像データを色調補正、編集すると、明らかに違いが解ります。
小さいイメージセンサーで記録された画像データは、色調補正、編集できる幅が狭く、「階調」が破綻しやすいです。
イメージセンサーの大きさは、どれくらい違うのでしょう
実際に、イメージセンサーの大きさ、光を受ける部分の面積はどれくらい違うのかを知っておきましょう。
なぜなら、センサーの光を受ける部分の物理的な大きさ、面積の差が取り込める光の量の差に影響するからです。
例えば、一般的なスマートフォンのイメージセンサーとフルサイズのイメージセンサーの大きさ(面積)の差は、30倍もの差があります。
フルサイズのイメージセンサーのワンランク下のサイズ、APS-C サイズと一般的なスマートフォンとでは13倍の差です。
これだけ取り込める光の量が違うことが解ります。
写真の色調の再現力、描写力、臨場感、クオリティーを決めるのは「階調」
写真の色調の再現力、描写力、臨場感、クオリティーを決めるのは「階調」です。
写真の色調の完成度は、「階調」に尽きてしまいます。
例えば、真っ白、真っ黒や真っ赤(何色でもいいのですが)のように、濃淡・明暗の変化がなく、平面的に広がっている箇所には、何が写っているのかは見えません。
見えない理由は、その箇所に「階調」がないからです。
つまり、再現力はゼロです。
写真の被写体の形状、色、明暗、様子は、「階調」の変化の具合で再現されています。
そして、色調の補正の仕方は、「階調」を補正する方法が基礎・基本ですので、この方法で行えばどの方法よりも「階調」を、色調を最も美しく、最も高いクオリティーで再現することができます。
そのためには、画像データがより豊かで美しい「階調」を記録していることが望ましいです。
<良い「階調」の写真>と<良くない「階調」>の写真の比較
下記の2点の写真は、<良い「階調」の写真>と<良くない「階調」の写真>の写真の比較をしています。
「階調」の差は、これくらい再現力、クオリティーに差がついてしまうという例です。
良い「階調」の写真
すぐ下の写真は、<良い「階調」の写真>です。
雲の形状、凹凸や木々の影の暗部の箇所の「階調」がしっかり再現されています。
また、全体の濃淡・明暗の変化や全体のボリューム感と豊かな「階調」が適正の範囲で再現されているので、描写力、臨場感や立体感、光感がしっかりと再現されています。
何より、この時の様子がちゃんと伝わってくる「階調」、色調の写真になっています。
良くない「階調」の写真
すぐ下の写真は、<良くない「階調」の写真>です。
まず、雲の明るい部分の「階調」が失われています。
雲の明るい部分の、濃淡・明暗の変化がなく平面的になっていて、形状、凹凸がわかりません。
木々の影の暗部も濃淡・明暗の変化がまったくなくなっていて平面的になっています。(暗部の黒さが淡く、あまくなるよりは大きな問題ではありません。)
写真全体の濃淡・明暗の変化が、明るい方、または暗い方へ片寄りすぎていて、「階調」がきれいに再現されていません。
そのため、全体のボリューム感、描写力、臨場感や立体感が弱く、ポイントの海面の光の反射も弱くなっています。
何より、明るいというだけで、この時の様子が伝わりづらいです。
再現力・描写力・臨場感、また、立体感など、高いクオリティーの色調の写真にするためには、カメラが記録した「階調」の濃淡・明暗の変化を<基礎・基本>通りに補正すれば、誰にでも実現することができます。
その結果、「階調」、再現力が豊かになるので、描写力、臨場感、立体感もある色調の写真に仕上げられます。
そのためには、撮影したデータが豊かで美しい「階調」を記録していることが欠かせません。
次の項では、豊かで美しい「階調」を記録できるデジタルカメラの必須条件について、簡単にお話しします。
写真の色調の再現力、描写力、クオリティーは、「階調」で決まる理由を簡単に解説
イメージセンサーのサイズの差はどこで出る?
画面、モニターの解像度は高く、大型化しています
保存、保管しておく写真、画像は、スマートフォンのような小さな画面、モニターでしか見ないという方は、それほどの差を感じないかもしれません。
また、品質にはこだわらない方は、その差が見えなかったり気づかない方もいます。
しかし、画面、モニターの解像度はますます高くなっていますし、大型化もしています。
解像度が高くなり大型のモニターで写し出すと、これまで以上に画質の差ははっきりと見て解るようになってきます。
画像データを保管しておくことがベストでしょうか
もう1点は、写真をデータで保管しておくことはメリットばかりではありません。
例えば、ひと昔前、テープで録画していた映像の保管と再生に困ったように、今、保管している画像データは将来もストレスなく再生できるのでしょうか?
写真を画像データで保管しておくデメリットをいろいろと考えてみると、プリントして紙で保管した方が未来においても確実に写真を見ることができます。
それだけではなく、写真にこだわる方ほど、写真の美しさ、写真の真価はプリントだと知っています。
写真はプリントでの再現が最も美しいですし、プリントはインテリアにすることもできます。
プリント用の画像は、Web用より解像度だけでなく豊富な「階調」を保持している画像が必要
もし、将来、質の高いプリントを出力するためには、なるべく色調情報が豊富な画像データを準備しておく必要があります。
プリントに必要な画像は、画面、モニター用の解像度より高い解像度が必要です。
画質の良し悪しは、プリントでは画面、モニターで見るより顕著な差となって現れます。
ですので、豊富な「階調」を保持した画像データで保管しておくことが望ましいです。
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