デジタルカメラのイメージセンサーは、サイズが大きいほど画像の色調の再現力は高く、高画質になります。
本稿では、<35mmフルサイズ>と<APS-Cサイズ>のイメージセンサーを搭載したカメラで撮影した画像を比較して、再現力と画質の差を解説しています。
また、この差は撮影後の色調補正、画像編集での限界の幅にも影響します。
大きなイメージセンサーでは豊富な色調情報、「階調」が記録されるため、再現力、クオリティーは必然と高くなります。
デジタルカメラの購入を検討されている方は、必見の内容です。
デジカメ|イメージセンサーの大小の違いは再現力と画質の差。その実例と解説
イメージセンサーのサイズの違いは、画像の色調の再現力と画質の差となります。
大きなイメージセンサーを搭載したデジタルカメラは、物理的により多くの光を取り込めるため、豊富な色調情報を記録することが可能です。
記録された画像が豊富な色調情報を保持しているほど、画像の色調の再現力、クオリティーは必然と高くなります。
また、イメージセンサーが取り込める光の量が多いほど、画質は高くなります。
ですので、画像の色調の再現力と画質は、カメラがどれだけ多くの光を取り込んで豊富な「階調」の情報を記録できるかにかかっています。
階調とは
「階調」とは、濃淡・明暗の変化のことです。
被写体の色調は、濃淡・明暗の変化である「階調」で再現されています。
イメージセンサーが取り込める色調情報の量が多いほど、再現できる「階調」は豊富になるので、被写体はより繊細に、緻密に再現することができます。
なので、大きなイメージセンサーが記録する画像は、再現力の高い色調を実現できるのです。
色調の再現力、描写力、臨場感、立体感など、クオリティーにこだわりたい方は、もっとも押さえておきたいポイントです。
下記の画像(グレースケールといいます。)は、白黒で現した「階調」です。
被写体のすべての色調は、このように濃淡・明暗の変化、「階調」で再現されています。
右の白(淡)から、左にいくほど黒(濃)く変化しています。
上下の2段になっていて、
上段は、ステップで濃淡・明暗が変化しています。
下段は、グラデーションで濃淡・明暗が変化しています。
豊富な階調ほど、下段のように滑らかで美しい濃淡・明暗の変化を再現できます。
それ以外にも弊害はあり、色調補正や画像編集では調整中の早い段階で「階調」が破綻しやすいため、調整幅が狭くなります。
その症状は、階調のトーンジャンプや粒子感が目立ってくるなど、色調再現と画質を悪化させてしまいます。
そのため、色調を再現しきれないということが起こりやすくなります。
※ トーンジャンプとは、階調が滑らかに変化するのではなく、ステップ状に急激に変化してしまう状態のことです。(上記、グレースケールの上段のような変化)
<35mmフルサイズ>と<APS-Cサイズ>のカメラで撮影した写真の比較と解説
<35mmフルサイズ>と<APS-Cサイズ>のカメラで撮影した写真を比較し解説します。
写真の比較
下記の写真を使って比較します。
下記の2点の写真は、上記の写真の青ワク箇所を拡大しています。
下記2点写真、上がイメージセンサー<35mmフルサイズ>、下がイメージセンサー<APS-Cサイズ> です。
イメージセンサー<35mmフルサイズ>の写真
イメージセンサー<APS-Cサイズ>の写真
比較の解説
階調を比較してみると明らかな差が見てとれます。
木製の朱色の箇所と隣接している金属製の黒い部分には顕著な差が現れています。
<APS-Cサイズの写真>の方にはザラザラとした粒子が発生しています。
<35mmフルサイズの写真>の方にも多少の粒子は発生していますが、階調の滑らかさは明らかに違っています。
写真右上の背景の木々の階調も差が見てとれます。
滑らかさも違いますが、再現力も差があります。
<35mmフルサイズの写真>の方が滑らかで、木々の葉、枝の様子が再現されています。
<APS-Cサイズの写真>の方は、ザラつきが強く、木々の葉、枝の様子が見づらくなっています。
拡大してみるとよりわかるのですが、グレーの瓦の濃淡・明暗の変、階調の再現が違います。
<35mmフルサイズの写真>の方が、雨に濡れた瓦の階調が柔らかく滑らかに再現されています。
一般のカメラのイメージセンサーの中では、サイズの大きさは<35mmフルサイズ>が最も大きく、<APS-Cサイズ>は次に大きいセンサーですので、どちらの写真の階調も、また再現力も優れています。
しかし、イメージセンサーが小さくなるほど、これ以上の差が生じます。
なぜなら、「階調」の滑らかさ、豊富さ、再現力の差は、カメラが取り込める光の量の差によって生じるからです。
また、取り込める光の量が多くなるほど、画質も高くなります。
カメラが取り込める光の量は、物理的にイメージセンサーのサイズ、面積が大きいほど、より多くの光を受け取り込むことが可能になります。
ですので、イメージセンサーの大小の違いは再現力と画質の差となるわけです。
画質は、画素数ではなくイメージセンサーの大きさが影響する理由
スマホなどに搭載されている小さなイメージセンサーの画素数が多くなる傾向があります。
しかし、画素数が多くなるから画質が高くなるわけではありません。
よく誤解されているのですが、実は小さなイメージセンサーでは画素数が多くなるほど画質は低下してしまいます。
その理由は、画質はイメージセンサーの光を取り込む量が多いほど高くなり、少なくなるほど低くなるからです。
物理的に、イメージセンサーのサイズは大きいほど光を受け止める面積が広くなるため、必然と光を取り込む量が多くなります。
例えば、同じサイズのイメージセンサーで画素数が異なる場合、画素数が多い方が画質が低下してしまいます。
その理由を下記の図を使って解説します。
イメージセンサーは上記の図のように碁盤の目のように仕切られています。
(※ R/G/B とあるアルファベットは本稿では無視してください。)
1つの目を「1画素」といい、この画素の合計が「画素数」になります。
同じサイズのイメージセンサーで画素数を多くした場合、碁盤の1つの目は小さくなってしまいます。
(一定の面積の土地に、たくさん区画を作ろうとすれば、1区画の面積は小さくなってしまいます。)
つまり、1画素のサイズ、面積は小さくなります。
すると、この1画素が光を受け、取り込める光の量は少なくなってしまいます。
画質は、イメージセンサーの光を取り込む量が多いほど高くなり、少なくなるほど低くなるので、小さいイメージセンサーで画素数を多くすると画質は低下してしまいます。
(※ 同性能のイメージセンサーの比較です。)
画質の差は、特に暗部に現れます。
イメージセンサーとは
下記の画像はレンズを外したデジタルカメラです。
正面から見ると、下記のようにイメージセンサーを見ることができます。
イメージセンサーは、フィルムカメラのフィルムに当たる部品です。
このイメージセンサーがレンズを通った被写体の光を受けて、光の情報、階調を取り込んで記録します。
物理的にイメージセンサーのサイズ、面積が大きいほど、光の情報、階調を豊富に取り込むことが可能になります。
イメージセンサーは肉眼で見たままの被写体・光景の色をダイレクトに記録しているわけではありません。
被写体・光景の濃淡・明暗の変化である「階調」を記録しています。
写真の色調(すべての色と濃淡・明暗)は「階調」によって再現されています。
イメージセンサーのサイズの比較
下記は、イメージセンサーのサイズを比較した図です。
「1/2.3型」は一般的なスマホで使われているサイズ、「1.0型」はスマホやデジタルカメラで使われているサイズです。
「マイクロフォーサーズサイズ」、「APS-Cサイズ」、「35mmフルサイズ」は、デジタルカメラで使われているサイズです。
「1/2.3型」と「APS-Cサイズ」との面積の差は約13倍、「1/2.3型」と「35mmフルサイズ」との面積の差は約30倍の差があります。
つまり、スマホとデジタルカメラ「APS-Cサイズ」と「35mmフルサイズ」との面積の差は、約13倍〜約30倍もの差があるわけです。
この差が、光を取り込める量 = カメラが記録できる「階調」の情報量の差ということになります。
カメラが記録する「階調」の差は、色調の再現力の差になる
前述の項の【写真の比較】と【比較の解説】の通り、イメージセンサーのサイズが大きいほど、カメラが記録できる「階調」の情報量は豊富になります。
カメラが記録できる「階調」の情報量が豊富になるほど、サイズの小さなイメージセンサーでは再現できない滑らかで広く豊かな階調の色調を再現できます。
この階調の差は、被写体の繊細な質感、ディテール、陰影や色味の変化などにも差となって現れます。
「階調」の情報量が豊富になるほど、写真の再現力、描写力、臨場感、立体感など、色調のクオリティーは高くなります。
また、「階調」の情報量は、撮影後の画像の色調補正、画像編集の限度の幅にも影響します。
「階調」の情報量が豊富なほど、再現できる色調の幅は必然と広がります。
イメージセンサーのサイズは、大きいほど滑らかで美しく豊富な「階調」を記録することができるので、被写体の「階調」、色調をリアルに再現することができます。
繰り返しになりますが、イメージセンサーのサイズは大きいほど滑らかで美しく豊富な「階調」を記録することが可能になります。
写真の再現力、描写力、臨場感、立体感など、クオリティーの高さは、カメラがどれだけ滑らかで美しく豊富な「階調」を記録できるイメージセンサーを搭載しているかにかかっています。
※本稿の画像は、「Adobe Photoshop」を使って補正、制作しています。
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