本稿は、画像の色調、ハイライト・明部の「階調」を補正するときのポイントを解説しています。
色調補正とは、画像の「階調」、トーンを補正するということです。
「階調」とは、色調の濃淡・明暗の変化、段階のことです。
「階調」の補正で最も重要なのはハイライト・明部の補正です。
ハイライト・明部の補正は全体の色調の仕上がりに大きく影響します。
また、立体感や光感、テクスチャー、質感などの再現、色調のクオリティー、再現力を決定づける重要な補正になります。
その理由、意味を画像の比較だけでも分かるような内容になっています。
3点の画像を使い、ハイライト・明部の補正を変えた色調の比較と補正のポイントを解説しています。
画像の色調補正【ハイライト・明部の「階調」補正のポイント-vol.1】
色調補正の基本中の基本で、まず最初に行うのがハイライト・明部の補正です。
ハイライト・明部の補正は、色調のクオリティーを決定づけるほど非常に重要になります。
クオリティーの高い色調にこだわりたい方は、必ず押さえておく必要があります。
ハイライト・明部の補正がどれほど重要か?その理由が下記の項の画像を見ただけでも分かると思います。
さらに、画像ごとに補正のポイントになる点も解説していますので、より理解が深まると思います。
ハイライト・明部の階調の違いを画像で比較
3点の画像、A・B・Cを使って、下記の①〜③のように3パターンの異なるハイライト・明部の補正を行い、その色調の違いを比較し、補正のポイントを解説しています。
① ハイライト・明部の階調が適正な画像
② ハイライト・明部の階調が明るすぎる画像
③ ハイライト・明部の階調が暗すぎる画像
サンプル画像_Aの比較
① ハイライト・明部の階調が適正な画像
② ハイライト・明部の階調が明るすぎる画像
③ ハイライト・明部の階調が暗すぎる画像
サンプル画像_Aの比較を解説
<① ハイライト・明部の階調が適正な画像>と<② ハイライト・明部の階調が明るすぎる画像>の比較と補正のポイント
<① ハイライト・明部の階調が適正な画像>は、この画像のハイライト・明部に当たる雲の白い部分から淡いグレーまでの濃淡・明暗の変化、階調が適正な範囲で再現されています。
その結果、光が当たった白い部分から濃いグレーの部分まで、雲の階調の変化がきれいに再現されています。
<② ハイライト・明部の階調が明るすぎる画像>は、雲の白い部分が真っ白く飛んでしまっていて、さらに淡いグレーの部分まで白くなっています。
その理由は、ハイライトの補正が適正ではなく明る過ぎることが原因です。
そのため、撮影した画像には記録されている階調の濃淡・明暗の変化が再現できていません。
結果として、肝心の雲の凹凸が再現できていないので、この画像の色調からは雲の立体感や迫力も伝わりづらくなっています。
本例では分かりやすく少々極端に明るくしていますが、この事例の画像は非常に多く見られます。
また、カメラが保存するJPG画像にも多く見られる事例です。
<① ハイライト・明部の階調が適正な画像>と<③ ハイライト・明部の階調が暗すぎる画像>の比較と補正のポイント
<① ハイライト・明部の階調が適正な画像>については、上記と同様です。
<③ ハイライト・明部の階調が暗すぎる画像>は、雲の白い部分が白くなく暗くなっています。
こちらの画像もハイライト・明部の補正が適正ではなく暗過ぎることが原因です。
そのため、全体の色調も暗い印象になっていますし、葉の緑がくすんでいます。
また、奥の山々、葉のテクスチャーが弱くなっています。
その結果、全体の色調は立体感や奥行き感、光感が弱くなっています。
この日は晴れていたのですが、まるで曇っていたかのような色調になっていて、晴れた日の風景、雲や山々、木々の様子が伝わらない仕上がりになっています。
サンプル画像_Bの比較
① ハイライト・明部の階調が適正な画像
② ハイライト・明部の階調が明るすぎる画像
③ ハイライト・明部の階調が暗すぎる画像
サンプル画像_Bの比較を解説
<① ハイライト・明部の階調が適正な画像>と<② ハイライト・明部の階調が明るすぎる画像>の比較と補正のポイント
<① ハイライト・明部の階調が適正な画像>は、この画像のハイライト・明部に当たるところ、画像手前の右下部の石ブロック上面に注目してみると、石の白さとテクスチャーが残るくらいに再現されていて適正な明るさに補正されていることが分かります。
また、中央のバイクのキャッチライト(光っている部分)から濃いグレーまでの階調の濃淡・明暗が適度に再現されています。
<② ハイライト・明部の階調が明るすぎる画像>は、画像手前の右下部の石ブロック上面のテクスチャーが残っていないくらい真白くなってしまっています。
また、中央のバイクのキャッチライト(光っている部分)が真白く飛び過ぎています。
その結果、キャッチライト(光っている部分)の周囲に青色の色ムラが強調されています。
理由は、ハイライトの補正が適正ではなく明る過ぎることが原因になっています。
それ以外の明部の箇所も白っぽくなっていて、全体にボリュームがなく浅い印象の色調になっています。
<① ハイライト・明部の階調が適正な画像>と<③ ハイライト・明部の階調が暗すぎる画像>の比較と補正のポイント
<① ハイライト・明部の階調が適正な画像>については、上記と同様です。
<③ ハイライト・明部の階調が暗すぎる画像>は、画像手前の右下部の石ブロック上面の白い部分が白くなっていません。
また、中央のバイクのキャッチライト(光っている部分)のテカリが弱くなっています。
そのため、バイクや石の階調の濃淡・明暗の変化の幅が狭くなっているため全体のテクスチャー、メリハリの再現が弱くなっています。
理由は、ハイライトの補正が適正ではなく暗過ぎることが原因になっています。
その結果、ハイライト・明部の階調が再現できていないため、抜けが悪く全体の色調も暗くなっています。
サンプル画像_Cの比較
① ハイライト・明部の階調が適正な画像
② ハイライト・明部の階調が明るすぎる画像
③ ハイライト・明部の階調が暗すぎる画像
サンプル画像_Cの比較を解説
<① ハイライト・明部の階調が適正な画像>と<② ハイライト・明部の階調が明るすぎる画像>の比較と補正のポイント
<① ハイライト・明部の階調が適正な画像>は、ハイライト・明部に当たる画像左上の雲の白い部分から淡いグレーまでの階調の濃淡・明暗が適正な範囲で再現されていますし、それ以外の明部も明る過ぎる箇所はありません。
ハイライト・明部の補正だけでは全体の色調はやや暗い印象ですが、ハイライト・明部の補正後に明るく補正する手順で解決できます。
ここではハイライト・明部の補正結果を比較しているため、それ以外の補正は行っていません。
<② ハイライト・明部の階調が明るすぎる画像>は、雲の白い部分が真白く飛んでしまっていて、淡いグレーの部分まで白くなっています。
その結果、雲の階調の濃淡・明暗の変化、テクスチャーが再現できていません。
理由は、ハイライトの補正が適正ではなく明る過ぎるためです。
ハイライト・明部の補正が明る過ぎる影響で全体の色調も明るくなっています。
一見するときれいですが、雲の階調が真白く飛んでしまっているためカメラが保存するJPG画像で多く見られるレベルの色調になってしまいます。
雲の階調まできちんと再現できると、より色調再現のクオリティーが高い画像になりますし、よりこの時の光景が伝わる画像になるでしょう。
<① ハイライト・明部の階調が適正な画像>と<③ ハイライト・明部の階調が暗すぎる画像>の比較と補正のポイント
<① ハイライト・明部の階調が適正な画像>については、上記と同様です。
<③ ハイライト・明部の階調が暗すぎる画像>は、雲の白い部分が白くなく淡いグレーになっていて、ハイライト・明部の階調が再現できていません。
その結果、紅葉に陽が当たっている様子が再現できていませんし、色もくすんでしまっています。
また、画像全体の色調も暗くなっています。
理由は、ハイライト・明部の補正が適正ではなく暗過ぎることが原因です。
備考:<適正な階調の補正を行った画像>と<カメラが保存したJPG画像>の色調を比較
本項は備考になりますが、上述で使用したA・B・Cの3点の画像を使って<適正な階調の補正を行った画像>と<カメラが保存したJPG画像>の色調を比較しています。
<適正な階調の補正を行った画像>とは、ハイライト・明部の補正だけでなく、シャドウ・暗部も適正な補正を行った画像です。
単にカメラが保存しているJPG画像を使うよりも、色調補正を行って仕上げる方がクオリティーの高い仕上がりになることが分かる事例です。
解説はありませんが、見てすぐに分かる事例です。
サンプル画像_Aの比較
適正な階調の補正を行った画像
カメラが保存したJPG画像
サンプル画像_Bの比較
適正な階調の補正を行った画像
カメラが保存したJPG画像
サンプル画像_Cの比較
適正な階調の補正を行った画像
カメラが保存したJPG画像
まとめ
ハイライト・明部の補正は、色調のクオリティーを決める最も重要な補正です。
ハイライト・明部とシャドウ・暗部の補正は、色調補正の「基礎・基本」です。
なぜなら、ハイライト・明部とシャドウ・暗部の補正によって画像全体の「階調」の濃淡・明暗の幅、範囲が決まるからです。
色調の表現、仕上がりはさまざまで良いのですが、それぞれの画像で適正な補正ができるようになると表現の幅、補正の幅はより広がります。
画面を見て色調を判断する感覚だけの補正ですと、画面が変わったときなどでは色調再現のブレが大きくなってしまいます。
理由は、機器の画面ごとに発色が異なっていることが原因です。
また、感覚的な補正では補正アプリや補正ツールが変わると、そのたびにあらたに使い方を覚えなくてはならなくなります。
しかし、「基礎・基本」に則った補正は原理であることから、共通のツールで補正を行えます。
また、その他の補正アプリにも応用が効きますし、プリントでの色調を合わせたりコントロールするときにも役立ちます。
本稿では、ハイライト・明部の補正のポイントを画像の色調を比較しながら解説しました。
階調とは?/画像の色調【再現力を決める「階調」とは?わかりやすく解説】
※ 本稿の画像は、Adobe「Photoshop」を使って、色調補正、編集のすべてを行っています。
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