RAW現像【シャドウ/暗部の補正の仕方、考え方とポイントを解説】

RAW現像【シャドウ/暗部の補正の仕方、考え方とポイントを解説】

デジタルカメラのRAWデータの現像について解説します。

本稿では、現像でのシャドウ、暗部の補正の仕方、考え方とポイントを解説していきます。

解説で使用する画像

下記の画像のRAWデータを使って解説していきます。

上の画像は、”撮って出し”と言われるJPEG画像です。

この画像は、撮影するとすぐにデジタルカメラのアルゴリズムで補正され保存される画像で、一般的なアプリですぐに見ることができます。

RAWデータを使用していない場合は、この画像をそのまま使用したり、この画像から補正を行なって使用していることになります。

また、多くのデジタルカメラは撮って出しのJPEG画像と同時にRAWデータも保存できます。（設定が必要な場合があります。）

多くの方は撮って出しのJPEG画像を使っていますが、RAWデータを使った方がクオリティーの高い、階調が美しい画像に仕上げることができます。

なぜなら、RAWデータにはデジタルカメラが記録している最大の色調情報が記録されているからです。

撮って出しのJPEG画像の色調は、色調情報が間引きされてしまっていることがたびたび起こります。

特に、ハイライト/明部が白飛びしたりシャドウ/暗部がつぶれて、テクスチャーや質感、凹凸感などがフラットになり、再現できていないといった色調の傾向が多く見られます。

JPEG画像とRAWデータを現像した画像の色調を比較

下記では、同一カットの＜撮って出しのJPEG画像＞と＜RAWデータを現像し色調補正を行った画像＞の色調の違い、差を比較しています。

下記は、先述の＜撮って出しのJPEG画像＞です。

下記は、同一カットの＜RAWデータを現像し色調補正を行った画像＞です。

本稿のテーマ、「シャドウ」と「暗部」に当たる箇所に着目してみましょう。

その箇所は、手前から2つ目の岩の黒っぽいところに着目してみます。

2点の画像のこの箇所を比べてみると、黒っぽい箇所の岩の形状、テクスチャーの再現が違います。

また、奥の岩にいたるまで、暗く黒っぽくなっている箇所に、同様の違い、差がみられます。

現像アプリを使ったシャドウ/暗部の補正を解説

現像アプリを使ってシャドウ/暗部の補正を解説していきます。

現像アプリは、「Photoshop の CameraRaw」 を使って解説しています。

(※CameraRaw とは Photoshop のフィルター機能です。 CameraRawの性能、機能、使い方は、現像アプリ「 LightRoom」と同じです。)

また、異なるアプリでも補正の考え方、取り組み方は同じですので、ぜひ、参考にしてみてください。

下記は、先述の＜撮って出しの画像＞と＜RAWデータを現像、色調補正を行った画像＞のRAWデータを、「Photoshop の CameraRaw」で開いたときの操作画面です。

操作画面の右側のメニュー欄に水色のワクで囲んだ箇所があります。

ここに基本的な色調補正を行うツールが並んでいます。

上から、＜露光量＞、＜コントラスト＞、＜ハイライト＞、＜シャドウ＞、＜白ラベル＞、＜黒ラベル＞の順に並んでいます。

本稿のテーマ、シャドウと暗部の補正は、＜シャドウ＞と＜黒ラベル＞を使って補正を行います。

下記の項では、「露光量」「シャドウ」「黒ラベル」ツールの機能、使い方、色調の変化を解説していきます。

※ 「露光量」は、シャドウと黒ラベルの補正で直接的には使用しませんが、シャドウと黒ラベルにも影響するため、一応、解説しておきます。

「露光量」「シャドウ」「黒ラベル」ツールの使い方

「露光量」「シャドウ」「黒ラベル」ツールの使い方を下図を使って解説します。

各ツールの使い方は同じです。

使い方は、スライダーを動かす方法と数値を入力する方法があります。

図：各ツールの使い方

下記の項では、各ツールごとに補正を行い、それに応じた画像の色調の変化を見ていきます。

露光量

＜露光量＞の機能と補正による色調の変化を見ていきましょう。

機能：画像全体の明暗を補正することができます

（使い方は、先述の通りです。）

補正によって、色調がどのように変化していくのかを＜無補正の色調＞と補正後を比較して見ていきます。

無補正の色調

スライダーを右へ / 数値を＋1.00

「シャドウ」「暗部」の箇所、手前から2つ目の岩の黒っぽい箇所に着目してみてみましょう。

2点の画像のこの箇所を比べてみると、＜スライダーを右へ / 数値を＋1.00＞の方は明るくなっている分、岩の形状、テクスチャーがより見えています。

また、奥の岩まで、暗く黒っぽくなっている箇所は同様に明るくなって、より岩の形状、テクスチャーが見えています。

ただ、「シャドウ」「暗部」以外の画像全体が明るくなっているため、補正が不要な箇所にも影響しています。

スライダーを左へ / 数値を−1.00

同様に「シャドウ」「暗部」の箇所、手前から2つ目の岩の黒っぽい箇所に着目してみてみましょう。

2点の画像のこの箇所を比べてみると、＜スライダーを左へ / 数値を−1.00＞の方は暗くなっている分、岩の形状、テクスチャーが見えなくなっています。

また、奥の岩まで、暗く黒っぽい箇所はより暗くなっているため、岩の形状、テクスチャーが見えません。

「シャドウ」「暗部」以外の画像全体も暗くなっています。

シャドウ

＜シャドウ＞の機能と補正による色調の変化を見ていきましょう。

機能：

暗く濃い箇所の補正をします。

通常のシャドウと言われる箇所より広い範囲まで効果があります。

（使い方は、先述の通りです。）

補正によって、色調がどのように変化していくのかを＜無補正の色調＞と比較して見ていきます。

無補正の色調

スライダーを右へ / 数値を＋100

「シャドウ」に当たる箇所、手前から2つ目の岩の黒っぽい箇所に着目してみてみましょう。

＜無補正の色調＞と比べると、その箇所が明るくなっています。

また、奥の岩まで暗く黒っぽい箇所は、岩や草木、苔の様子まで見えるくらいに明るくなっています。

暗く黒っぽい箇所より明るい箇所ほど、この補正の影響は受けていません。

スライダーを左へ / 数値を−100

シャドウ」に当たる箇所、手前から2つ目の岩の黒っぽい箇所に着目してみてみましょう。

＜無補正の色調＞と比べると、その箇所が暗く濃く黒っぽくなっています。

また、奥の岩まで、暗く黒っぽくなっている箇所はより暗く濃く黒っぽくなっていて、岩や草木、苔の様子は見えなくなっています。

黒ラベル

＜黒ラベル＞の機能と補正による色調の変化を見ていきましょう。

機能：

先述のシャドウと比べ最も暗く濃く黒い範囲をメインに補正をします。

通常のシャドウと言われる箇所より広い範囲まで効果があります。

（使い方は、先述の通りです。）

補正によって、色調がどのように変化していくのかを＜無補正の色調＞と比較して見ていきます。

無補正の色調

スライダーを右へ / 数値を＋100

＜無補正の色調＞と比較してみます。

手前から2つ目の岩の黒っぽいところに着目すると、最も暗く濃く黒い範囲をメインに明るくなっています。

また、それよりも明るく淡い1番手前の岩の紋様にも効果の影響が現れています。

奥の岩の方まで、暗く黒っぽくなっているところが明るくなっていて、岩や草木、苔の様子がやや見えるようになっています。

スライダーを左へ / 数値を−100

＜無補正の色調＞と比較してみます。

手前から2つ目の岩の黒っぽいところに着目すると、暗く濃く黒っぽい範囲が真っ黒くなっています。

また、それよりも明るく淡い1番手前の岩の紋様も暗く濃くなっていて、広い範囲まで効果の影響が現れています。

奥の岩の方まで暗く黒っぽい範囲が真っ黒くなっていて、岩や草木、苔の様子が見えなくなっています。

「シャドウの+100」と「黒ラベルの+100」を並べて比較

通常のシャドウと言われる暗く濃い黒っぽい箇所の補正は、明るく淡い方向に補正することが多いです。

ここでは明るく淡い方向の補正、「シャドウの+100」と「黒ラベルの+100」を並べて比較し、それぞれの効果の特徴を見ていきます。

シャドウ+100

黒ラベル+100

「シャドウ」と「黒ラベル」はそれぞれの効果の範囲が違います。

手前から2つ目の岩の黒っぽいところに着目してみると、

「シャドウ+100」は、暗く濃く黒っぽい箇所の広い範囲に効果が現れています。

「黒ラベル+100」は、最も暗く濃く黒い箇所をメインに効果が現れ、それよりやや明るく淡い範囲には効果が小さいことが解ります。

「シャドウ+100」+「黒ラベル+100」の効果と「無補正の色調」を比較

「シャドウ+100」+「黒ラベル+100」の効果と「無補正の色調」を比較してみましょう。

「シャドウ」と「黒ラベル」の両方を+100まで最大に明るく淡い方向へ補正すると、下記のような効果を得られます。

＜無補正の色調＞と比較してみましょう。

「シャドウ+100」+「黒ラベル+100」

下記は、無補正の色調です。

無補正の色調

手前から2つ目の岩の黒っぽいところに着目して比較してみましょう。

「シャドウ」と「黒ラベル」の両方を+100まで最大に明るく淡い方向へ補正すると、シャドウと暗部をかなり暗く濃くすることができます。

その効果は、＜無補正の色調＞と比較するとよく解ります。

しかし、最暗部のしまりがなく通常のシャドウと呼ばれる適正な補正ではありません。

そのため、画像全体のメリハリ、コントラスト、立体感、臨場感、光感、奥行き感などが再現できていません。

この状態ですと、さらに補正が必要です。

下記の項では、完成に向けて現像と色調補正の考え方とポイントを解説します。

現像でのシャドウ、暗部の補正の仕方、考え方とポイント

現像でのシャドウ、暗部の補正の仕方、考え方とポイントを解説します。

冒頭の方で紹介した2点の画像を比較すると、より理解しやすいと思います。

下記がその2点の画像です。

＜RAWデータを使って現像、色調補正を行った画像＞

＜撮って出しのJPEG画像＞

RAWデータを使って現像、色調補正を行った画像

撮って出しのJPEG画像

本稿のテーマのシャドウと暗部に当たる、手前から2つ目の岩の黒っぽいところに着目してみましょう。

2点の画像を比較してみると、＜RAWデータを使って現像、色調補正を行った画像＞の方は、手前から2つ目の岩の黒っぽいところのディテールがよくわかると思います。

その理由は、最暗部の真っ黒いところからそこよりやや明るい黒っぽいところの範囲まで、明暗・濃淡をきちんと再現しているからです。

こうした明暗・濃淡の変化を「階調」といいます。

シャドウと暗部の色調を再現するポイントは、この「階調」をきちんと再現することです。

RAWデータの色調情報を最大に生かした「階調」の再現が、最大の再現力を実現できます。

その効果は、立体感、臨場感、奥行き感、光感、メリハリなどに現れ、被写体の形、テクスチャー、ディテール、表情などの再現力を高めます。

現像でのシャドウ、暗部の補正の仕方、考え方とは、シャドウ、暗部の範囲の明から暗をていねいに補正することです。

そして、現像後、さらに緻密な色調補正を行うことで、より明から暗の階調の再現力は高めることができます。

下記の項では、現像、色調補正でのシャドウの数値について解説します。

現像、色調補正でのシャドウの数値について

色調は、必ず数値を確認する必要がある理由

モニターやプリントの色調は数値で決められ管理されています。

ですので、RAWデータの現像、画像の色調補正の際は、色調の良し悪しの判断をモニターの色調に依存せず、必ず数値を確認することが大切です。

繰り返しになりますが、すべての色調は数値で管理されていて、モニターやプリントは数値を基準に色調を再現しているからです。

また、一般的なモニターは色再現を管理できる専用のモニターと違い、個々に発色、明暗の再現が異なっていますので、見た目の色調をあてにするのはほどほどが良いと思います。

見た目の確認であれば、修正前と修正後の差を比較するといった確認の仕方は有効だと思います。

（モニター画面の場所によって色再現が異なっていることがありますので、注意してみてください。）

ですので、数値を確認することで、画像の色調はより仕上がりイメージに近くなっていくと思います。

RGBカラー画像のシャドウの数値

デジタルカメラで撮影した画像は、RGBカラーの画像です。

RGBカラーは、R：Red(赤) 、G：Green(緑)、B： Blue(青) の3色を原色にして、各3色の配合を変え混ぜ合わせて、すべての色、色調を再現しています。

数値は、最も明るく淡い [ 255 ] 〜 最も暗く濃い「 0 」の範囲で、すべての色、色調を現します。

[ 255 ] に近いほど明るく淡くなり 、[ 0 ] に近いほど暗く濃くなります。

カラー画像の最も明るく淡く真っ白の数値は、 [R：255] 、[G：255]、[B：255] になります。

最も暗く濃く真っ黒の数値は、 [R：0]、[G：0]、[B：0] になります。

画像の最暗部のシャドウは、真っ黒いほど画像全体の色調はしまって見えますし、コントラスト、メリハリ、立体感、臨場感、奥行き感、光感は増します。

ですので、基礎・基本の最暗部のシャドウの数値は、 [R：0]、[G：0]、[B：0] になります。

※ カラー画像の「RGB」について、詳しい解説は下記のリンク先(本ブログ記事)で解説しています。

「RGB」/ 光の三原色とは

※ 本稿の画像は、Adobe「Photoshop」を使って、色調補正、編集のすべてを行っています。

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