
本稿は、国内海外の一流の写真家やデザイナー、編集、ディレクターの方々から求められた写真の色調について解説しています。
約30年、写真のスキャニング、画像データの色調補正、編集〜プリンティング・ディレクターとして、国内海外、多くの写真家のプリント、写真集の制作に携わってきました。
名実ともに一流の写真家、デザイナー、ディレクター、編集者・・・・彼らから求められてきた写真の「美しい」色調とは?
不思議なことに、多くの写真家が求める色調には共通点があります。
写真の色調にこだわり、再現力、描写力のクオリティーを追求したい方に向けた内容です。
写真の色調【一流の写真家たちが求めた「美しい」色調とは】


写真の色調補正〜プリンティング・ディレクターの仕事
国内海外の写真家、デザイナー、ディレクター、編集者・・・・名実ともに一流の錚々たる彼らは、目標とする写真の色調をさまざまな言葉で表現します。
彼らが目標とする色調、イメージする色調は言葉で表現し説明しますので、その言葉の真意を正確に理解すること、また正確に色調として再現することは非常に難しいことでした。
まず、言葉の真意を理解するまでに、それまでの色調の概念を書き換える必要がありました。
そして、一般的、表面的な「きれい」から彼らが「美しい」と表現する色調を理解し再現できるまでには何年もの経験を要しました。
彼らが目標とする色調はとても厳密で、それに応える色調再現のためには、まず、正確さは無論のこと、緻密に繊細に画像を色調補正する必要がありました。
例えば、写真集の場合、およそ100点くらいの写真点数になります。
この全点でOKを頂けるまで、デジタル化以前はスキャニングをし直し、デジタル化以降は画像データの色調補正し直しを行います。
また、プリント、印刷での色調再現も緻密で繊細な機器の調整が必要でした。
プリント、印刷後は、要望通りの色調に再現されているかを1点1点チェックし、再び、彼ら全員が揃う校正に立ち合い写真全点の修正、要望を聞きます。
このプロセスを、すべての写真でOKを頂けるまで繰り返します。
すべての写真がOKとなると、いよいよ製品となるプリント、印刷を行います。
このとき、OKの色調にピタリと合うように機器の調整を行いながらプリント、印刷を行います。
印刷では、色調の確認をしオペレーターに指示を出して色調のコントロールをします。
国内海外、一流の写真家たちが求める色調とは?
一般的、表面的な「きれい」な色調は、名実ともに一流の錚々たる彼らような目の肥えた方々にはまったく通用しません。
写真を見て、その色調が「美しい」と感じる基準は人それぞれです。
しかし、一般的、表面的な「きれい」な色調は一言でいうと稚拙な色調に見えるのです。
彼らが目標の色調を説明するときに使ったさまざまな言葉の中から、もっとも腑に落ちた表現は「美しい」という言葉です。
最初は「美しい」という表現の本質、意味が理解できず、その色調が全然イメージできませんでした。
当時は「キレイ」はダメで「美しい」色調とは何だろう・・・となり、理解するまでに苦悩しました。
色調のイメージを言葉で伝えることは難しく、説明での言葉はどうしても抽象的にならざるを得ません。
そして、多くの経験の中でそれまでたくさんの抽象的な表現、形容、説明、言葉を聞きましたが、それらの中で最も腑に落ちた言葉は「美しい」でした。
「美しい」という言葉が写真の色調の本質を表現し、いちばん伝わる言葉だと思いました。
色調は「色」ではなく、「階調」
写真の色調の本質が理解できると、彼らの説明、言葉が理解できるようになって、それ以降、彼らからは「わかるよね?」といった説明で済んでしまうことが多くなりました。
私が経験したことからお伝えしたい事は、一流写真家が撮る写真の色調の「美しさ」を表現するためには「階調」の再現は絶対に欠かせなかったという真実です。
不思議な事に、経験の浅い写真家ほど「色」を追い、大御所ほど「階調」再現のクオリティーを求めました。
「美しい」と表現する色調は決して感覚的なものだけではなく、彼らのような目の肥えた多くの方が共感する色調の表現だと思います。
「美しい」色調再現を実現するためには、「階調」のクオリティーを高くすることが求められます。
「階調」のクオリティーを高くするためには、写真の色調を見る洞察力と色調補正の本質、「基礎・基本」の理解、スキルが必須になります。
そして、明部から暗部まで「階調」の全範囲を緻密に繊細に適正に補正することが必要です。
その結果、再現力、描写力を最大化することが可能になります。
色調補正の本質
写真の色調の表現、再現は個々の自由です。
目標の色調が安易な色調であれば安易な方法で実現できます。
しかし、再現力、描写力の高い色調が目標となると安易な方法では実現が困難になります。
これを実現するためには、画像の色調をコントロールしている「階調」について知ることです。
それが解れば色調補正の本質が「階調」をコントロールすることだと理解できます。
ですので、「階調」をコントロールする方法こそが、色調補正の「基礎・基本」になるわけです。
この「基礎・基本」の方法を実践することで、画像が記録、保持している色調情報を最大に生かして、再現力、描写力を最大化できるようになります。
色調補正の「基礎・基本」については、画像の色調補正【色調補正の本質とは?「基礎・基本」の解説】で解説しています。
「階調」の違い、差とは? 画像の色調で比較
画像を使って、「階調」の違い、差を比較してみます。
この比較では、一見して分かるくらい違い、差のある画像を使用しています。
下記の上下に並んだ2点の画像ですが、
上の画像は、「階調」のコントロール、補正が適正ではないため、再現力、描写力が低く弱い色調になっています。
下の画像は、「階調」のコントロール、補正が適正の範囲であるため、再現力、描写力が高く強い色調になっています。




2点の画像の比較を解説
実は、上記の2点の画像は、カメラに保存される「JPEG」画像と「RAW」データを使用しています。
上の画像:撮って出しと呼ばれる、撮影するとカメラが記録、保存している「JPEG」画像
下の画像:「RAW」データから基本的な現像と階調の色調補正のみを行なった画像
上の画像
明部の階調の補正が適正でないため、雲や霧の凹凸が再現、描写ができていません。
雲と霧は、フラットで一様に白っぽくなっていて、様子や表情はまったくわからない状態です。
そして、暗部の階調の補正も適正でないため、手前の森林が暗くつぶれ気味で木々のテクスチャーが再現、描写ができていません。
また、奥の山の陰影、岩の質感、残雪の再現、描写が弱いです。
全体的には臨場感、立体感の再現力、描写力が低い画像になっています。
下の画像
明部の階調の補正が適正であるため、雲の凹凸が再現、描写できています。
雲と霧の様子や表情が再現、描写されていて立体感があります。
そして、暗部の階調の補正が適正なため、手前の森林の木々のテクスチャーが再現され、描写できています。
また、奥の山の陰影、岩の質感、残雪の再現、描写がしっかりされています。
全体的には臨場感、立体感の再現力、描写力が高い画像になっています。
撮って出しと呼ばれる、撮影するとカメラが記録、保存している「JPEG」画像とは、カメラ独自のアルゴリズムを用いて色調補正されJPEG形式で保存された画像です。
「RAW」データとは、カメラ最大の色調情報を記録し保持しているデータです。
まとめ
僕の経験から、写真家、デザイナー、ディレクター、編集者・・・・名実ともに一流の錚々たる彼らたちから、色調に求められたこととは何かについて解説しました。
それは、「階調」の再現力、描写力でした。
色調の再現、補正の本質とは、「階調」の再現です。
以下は追記となりますが、、、
色調補正、上達方法の1つ。
ぜひ、モノクロ写真の色調補正に取り組んでください。
発色に依存する色調再現、表現は、スキルがなくても簡単に誰でもすぐにできます。
しかし、色のない階調だけのモノクロ写真では、「階調」の再現だけで美しさを再現するスキルが求められます。
モノクロ写真の色調補正を追求すれば、おのずとカラー写真の色調補正のスキルも上達します。
また、「RAW」データの現像でも色調補正のスキルは必須になります。
このスキルが高いほど、「RAW」データが保持している色調情報を生かすことができるので、「RAW」データを使うメリットはより大きくなります。
繰り返しとなりますが、色調補正の本質は「階調」の再現です。
写真の色調再現のクオリティーは、色調補正のスキルに依存しています。
色調補正の本質を見誤ると、ツールの使い方に慣れるだけで本当のスキルアップはのぞめなくなります。
ぜひ、本質から外れない取り組み方でスキルアップしていき、よりクオリティーの高い再現力、描写力の実現を目指していただきたいと思います。
高い再現力、描写力、美しい階調を撮影できる!おすすめのデジタルカメラとは?・・・・デジカメ【おすすめのメーカーと機種名|「描写性能」と「サイズ・重量」】
コメント