
本稿では、画像の色調の再現力・描写力を決める「階調」について、わかりやすく解説しています。
高い再現力、描写力を実現するためには、「階調」を理解することと適正な「階調」の補正が必要です。
本稿では、まず「階調」について解説します。
画像を使いながら、わかりやすく解説していきます。
「階調」を理解して、適正な「階調」の補正が実現できると、画像が保持している色調情報を最大に生かすことができ、再現力、描写力を最大化できます。
その結果、臨場感、立体感、奥行き感、光感などの描写力、被写体の質感、テクスチャーなどの再現力は最も高くなります。
画像の色調【再現力、描写力を決める「階調」とは?わかりやすく解説】


「階調」とは?
画像に写っている被写体の映像は、色調の明暗、濃淡の変化によって再現されています。
この色調の明暗、濃淡の変化の段階を「階調」といいます。
被写体の映像は、「階調」によって再現されています。
つまり、色調補正とは「階調」を補正しコントロールすることが本質ということになります。
「階調」をモノクロ画像で再現
「階調」をモノクロで再現すると、イメージしやすくなると思います。
モノクロ写真(画像)は、下記のモノクロ写真(画像)のように色のない単色の明暗(濃淡)の変化によって色調が再現されています。
この明暗(濃淡)の色調の変化を「階調」といいます。
上記のカラー画像をモノクロにした画像


「階調」を表すグレースケール
「階調」を、下記のような白〜黒のモノクロのスケール(グレースケール)で表すことができます。


上記のグレースケールは、「階調」の再現が上下の2段で異なっています。
上段はステップ状の段階で、下段は連続調の変化で「階調」を再現しています。
どちらも、右端の「1番」がもっとも白く・明るく・淡く、左端の「22番」がもっとも黒く・暗く・濃くなっています。
「1番」〜「22番」までの「階調」の変化を、上段のステップと下段のグラデーションで再現しています。
上段の段階数が細かく多くなるほど、下段のグラデーションのように、より滑らかで美しい「階調」になります。
このグレースケールのように、適正な「階調」の段階、変化を再現することが色調補正の本質であり、基礎・基本になるわけです。
カラー画像の色調も「階調」で再現されている
モノクロ写真(画像)のように、カラーの画像の色調も「階調」で再現されています。
カラーは「色」があるけど・・・と思われるかもしれませんが事実です。
それを冒頭のカラー画像を使って解説します。
それには、まずカラーになる仕組みを知っておく必要があります。


カラー画像の階調【すべての色が再現される仕組み】
カラー画像の色調も「階調」で再現されている理由は、カラー画像のすべての色が再現される仕組みが分かれば理解することができます。
カラー画像のすべての色が再現される仕組みとは、原色となる3色をそれぞれ配分を変えて混ぜ合わせることですべての色を再現しています。
カラー画像には、「RGB」カラー と「CMYK」カラー、2つのカラーモードがあり、それぞれに3つの原色があります。
・「RGB」カラーとは、Web、スマホ、パソコン、テレビなどのモニター、画面で見ているカラーモードです
・「CMYK」カラーとは、プリント、印刷でカラー印刷するときのカラーモードです
カラー画像の階調【すべての色を混ぜて再現する「原色」とは】
「RGB」、「CMYK」という名称は、原色名の頭文字になっています。
・「RGB」 は、[ R : Red (レッド) ]・[ G : Green (グリーン) ]・[ B : Blue (ブルー) ] の頭文字です。
・「CMYK」 は、[ C : Cyan (シアン) ]・[ M : Mazenta (マゼンタ) ]・[ Y : Yellow (イエロー) ] の頭文字と [ K : Black (ブラック) ] の K です。
「RGB」の [ R : Red (レッド) ]・[ G : Green (グリーン) ]・[ B : Blue (ブルー) ] は、光の三原色といいます。
下記の記事でくわしい解説をしています。
「CMYK」の [ C : Cyan (シアン) ]・[ M : Mazenta (マゼンタ) ]・[ Y : Yellow (イエロー) ] は、色の三原色といいます。
( [ K : Black (ブラック) ] は、暗部をより黒くするための補色として使用しています。)
下記の記事でくわしい解説をしています。
三原色を混ぜ合わせることで、すべての色を再現しています。
これらの三原色の各色を、1色づつ見ていくと「階調」で再現されていることが理解できます。
カラー画像の「階調」を画像で確認
モノクロだけでなく、色のあるカラー画像も「階調」で再現されています。
「CMYK」カラー 、「RGB」カラー 、それぞれカラー画像を使って解説します。
「CMYK」カラーの画像の「階調」
「CMYK」カラーの原色は、[ C : Cyan (シアン) ] ・ [ M : Mazenta (マゼンタ) ] ・ [ Y : Yellow (イエロー) ] + [ K : Black (ブラック) ] です。
「CMYK」カラーの画像の色は、これらの原色を混ぜ合わせてすべての色を再現しています。
「CMYK」カラーの画像


「CMYK」カラーの画像の色を、混ぜ合わせる前の原色、各1色づつに分けて見ていきましょう。
各1色づつに分けた画像の色は、各原色の色で再現しています。
画像の濃淡は、原色の配分量を表しています。
「CMYK」カラーの場合
・濃いところほど原色の配分量が多く、画面の表示、プリント、印刷で濃くなります
・薄く淡いところほど原色の配分量が少なく、画面の表示、プリント、印刷で薄く淡くなります
C : Cyan (シアン)の画像


M : Mazenta (マゼンタ)の画像


Y : Yellow (イエロー)の画像


K : Black (ブラック)の画像


各原色には、先述のモノクロの画像と同様の明暗・濃淡があります。
これが、CMYKのカラー画像の「階調」です。
CMYKのカラー画像は、プリントや印刷で使用するカラーモードです。
明るく淡い部分にはインクが少なく、暗く濃い部分にはインクが多くなることを表しています。
CMYKの各原色を混ぜる(重ねる)とカラー画像になります。
「CMYK」カラー【<色の三原色>を簡単に解説】


上の画像のように、たとえば、画像の同一の部分のC : Cyan (シアン)の「階調」が暗く濃い部分と Y : Yellow (イエロー)の「階調」の暗く濃い部分のインクが混ぜ合わせると、濃い緑色に発色します。
画像の同一の部分のM : Mazenta (マゼンタ)の「階調」が暗く濃い部分と Y : Yellow (イエロー)の「階調」の暗く濃い部分のインクが混ぜ合わせると、濃い赤色に発色します。
画像の同一の部分のC : Cyan (シアン)の「階調」が暗く濃い部分とM : Mazenta (マゼンタ)の暗く濃い部分のインクが混ぜ合わせると、濃い紫色に発色します。
このように、CMYKそれぞれの色の「階調」を変化させて、これを混ぜ合わせることによって発色と色の明暗・濃淡の「階調」を再現しています。
つまり、CMYKそれぞれの「階調」が「CMYK」カラーの画像の色調を決めているわけです。
「RGB」カラーの画像の「階調」
「RGB」カラーの原色は、[ R : Red (レッド) ] ・ [ G : Green (グリーン) ] ・ [ B : Blue (ブルー) ] です。
「RGB」カラーの画像の色を、混ぜ合わせる前の原色、各1色づつに分けて見ていきましょう。
各1色にしている画像の色は、原色の色で再現しています。
カラー画像のすべての色は、これらの色を混ぜ合わせてすべての色を再現しています。
「RGB」カラーの画像


「RGB」カラーの画像の色を、混ぜ合わせる前の原色、各1色づつに分けて見ていきましょう。
各1色にしている画像の色は、原色の色で再現しています。
「RGB」カラーの場合
1色づつ分けた各原色は、原色から黒で再現されます。
原色の配分の量が多いほど明るく鮮やかで、原色の配分の量が少ないほど暗く黒くなります。
画面で見る色は、明るく鮮やかな原色を混ぜるほど明るくになり、3色を混ぜると白くなります。
3原色の黒い部分が混ざり合うと、画面で見る色は黒くなります。
R : Red (レッド)の「階調」


G : Green (グリーン)の「階調」


B : Blue (ブルー)の「階調」


「RGB」カラーの画像も、3原色の各原色は「原色から黒の明暗・濃淡の変化」で表しています。
これが、「RGB」カラーの画像の「階調」です。
「RGB」カラー【<光の三原色>を簡単に解説】


上図のように、光の色であるRGBは色が混ざり合うと(原色の円が重なっている箇所)原色より明るくなります。
光の三原色を最大で混ぜ合わせると、「白」となります。
光の三原色を最小で混ぜ合わせると、「黒」になります。
2色が混ざると(上図、2色が重なった箇所)、下記の色になります。
・[ R (レッド) ] + [ G (グリーン) ] = 黄色 ( Y:イエロー )
・[ R (レッド) ] + [ B (ブルー) ] = ピンク ( M:マゼンタ )
・[ G (グリーン) ] + [ B (ブルー) ] = 水色 ( C:シアン )
RGBも、各原色ごとの原色から黒の明暗・濃淡の「階調」を混ぜ合わせてすべての色を再現しています。
色調補正の本質は「階調」の補正
これまでの解説で、「階調」が色調を再現していることを解説してきました。
「階調」のコントロールが、いかに重要かをご理解していただけたと思います。
色調補正の本質は「階調」の補正です。
色調のクオリティ、再現力は、「階調」をどれだけていねいに、繊細に、緻密にコントロール、補正するかに尽きます。
「階調」の補正は、色調補正やRAW現像でもっとも重要な普遍のスキルです。
このスキルさえ修得すれば、アプリ(ソフト)やあれこれツールに依存する必要はなくなります。
カラー画像の「階調」を画像とスケールで再確認
最後にもう1点、別のカラー画像のCMYKとRGBの「階調」も再確認しておきましょう。
先述の解説で使った「階調」を表すスケールも添付していますので、「階調」の段階的な変化を確認していただけます。
「CMYK」カラーの画像


C : Cyan (シアン)の「階調」


C : Cyan (シアン)の「階調」を表すスケール


M : Mazenta (マゼンタ)の「階調」


M : Mazenta (マゼンタ)の「階調」を表すスケール


Y : Yellow (イエロー)の「階調」


Y : Yellow (イエロー)の「階調」を表すスケール


K : Black (ブラック)の「階調」


K : Black (ブラック)の「階調」を表すスケール


「RGB」カラーの画像


R : Red (レッド)の「階調」


R : Red (レッド)の「階調」を表すスケール


G : Green (グリーン)の「階調」


G : Green (グリーン)の「階調」を表すスケール


B : Blue (ブルー)の「階調」


B : Blue (ブルー)の「階調」を表すスケール


まとめ
「階調」とは、画像に写る映像の明暗(濃淡)の変化、段階のことです。
「階調」をシンプルなイメージで表すと、下記のようなグレースケールで表すことができます。


すべての画像の映像は、この「階調」によって再現されています。
画像の再現力、描写力は、「階調」の明部〜暗部までを適正にコントロールすることで最大に実現することができます。
「階調」を適正に補正することで、デジタルカメラが記録した画像データの色調情報を、最大に生かすことが可能になります。
その効果は、臨場感、立体感、光感、遠近感、質感、テクスチャーなど、再現力、描写力の違い、差となって現れます。
美しい階調を撮影、記録できる、おすすめのデジタルカメラとは?デジカメ【おすすめのメーカーと機種名|「描写性能」と「サイズ・重量」】
コメント