本稿は、写真/画像の色調補正の本質とは?
色調補正の「基礎・基本」について解説しています。
写真/画像の色調の表現は自由で良いと思います。
単に色がキレイならOKと思っている方には、本稿は読む価値のない記事です。
しかし、どんな技術にも「基礎・基本」があるように、色調補正にもフィルム時代から変わらない原理、「基礎・基本」があります。
撮った写真には、見る方に伝えたい何らかのメッセージが写っているはずです。
そのメッセージを伝えるためには、被写体の色調を伝わるように再現する必要があります。
例えば、雲、光、人物の表情、街並み、建物、花や木々、山々、水など、臨場感、立体感、空気感、光感、質感、テクスチャーの再現です。
これらを最も再現できる方法が「基礎・基本」に則った色調補正です。
写真/画像の色調は、「基礎・基本」に則って実践することで最高レベルの再現力、クオリティーを実現することができます。
本稿は、写真/画像の色調をできるだけ高い再現力、クオリティーに仕上げたい方に向けた記事です。
本稿の解説は、おそらく、他のどこにも解説されていない内容になっています。
ぜひ、本稿で本物の色調補正の「基礎・基本」を知って頂きたいと思います。
写真/画像【色調補正の本質とは?「基礎・基本」の解説】
写真/画像の「色調」とは何かを理解しましょう
カラーの写真/画像に写っている雲、光、人物、街並み、建物、花や木々、山々、水などの被写体は、色や明暗・濃淡で再現されています。
色調に明暗・濃淡がなければ、被写体は真っ白、真っ黒、あるいは単色で塗り潰されたように写っていることになります。
写真/画像の映像、被写体は、明暗・濃淡の変化によって形、表情、質感、テクスチャーが再現されて、何が写っているかが見てとれています。
つまり、フィルムもデジタル画像も光の明暗・濃淡によって色調を再現し被写体を視覚化しています。
色調の「色」とは、文字通り「カラー」のことですが、白、黒、グレーの無彩色も含めたすべての色のことです。
色調の「調」とは、すべての色の「階調」(「調子」ともいいます)のことです。
「階調」とは、「明暗・濃淡」の変化、段階のことで、これを理解することが重要です。
写真/画像の「色調補正」とは何かを理解しましょう
色調の意味から解るように、「色調補正」とはすべての色の「階調」を調整、補正するということです。
これが「色調補正」の本質です。
つまり、「色調補正」の技術、ノウハウは「階調」の補正が原理になっています。
ですので、「階調」の補正を行う理論、技術が「基礎・基本」になるわけです。
無彩色、または単色のモノクロ写真/画像も同様です。
色のないモノクロ写真では、発色で表現する技法は通用しません。
カラー写真であろうとモノクロ写真であろうと、色調補正の理論、技術に変わりはありません。
むしろ、色のないモノクロ写真の色調補正こそが、色調補正の「基礎・基本」の核心になります。
なぜなら、モノクロ写真には「階調」しかなく、「階調」の補正の良し悪しが再現力、クオリティーを実現するすべてだからです。
カラー写真のように、発色のキレイさでごまかすことはできません。
繰り返しますが、モノクロ写真の美しさは「階調」の再現力、クオリティーによって実現されることになります。
カラー写真であっても、まず、「階調」の再現力、クオリティーを意識し追求していきましょう。
サンプル画像で階調の違い、色調の違いを比べてみましょう
<適正な色調補正を行った画像>1点と<適正でない色調補正を行った画像>2点の色調、階調の違いを比べてみましょう。
<適正な色調補正を行った画像>1点と<適正でない色調補正を行った画像>2点は、それぞれ同じ色調補正(階調の補正)を行ったカラー画像とモノクロ画像を比較し違いを解説しています。
(※ 適正な色調補正とは、基本的な階調の補正のみを行っています。)
適正な色調補正を行った画像
カラー画像
モノクロ画像
適正でない色調補正を行った画像1点目
カラー画像
この画像の色調は、全体にくすんでいて暗くて暗部のしまりが弱いです。
その結果、全体のメリハリ、立体感、光感がなく、木々、花、建物、水面の質感、テクスチャーの再現が弱くなっています。
空、木々、花、建物などの色もくすんで弱いです。
その結果、臨場感、立体感、奥行き、光感、メリハリ、ボリューム、テクスチャーなど、再現力が弱いです。
モノクロ画像
カラー画像と同様で、臨場感、立体感、奥行き、光感、メリハリ、ボリューム、テクスチャーなど、再現力が弱いです。
<適正な色調補正を行ったモノクロ画像>と比べて、フラットでモノクロ写真の階調の明暗、変化、美しさが再現できていません。
適正でない色調補正を行った画像2点目
カラー画像
明部は真っ白くとんで階調が無くなっていて、暗部は真っ黒くつぶれて階調が無くなっています。
その結果、空、花の質感、テクスチャー、建物の暗部の質感、テクスチャーが無くなっています。
モノクロ画像
カラー画像と同様で、明部は真っ白くとんで階調が無くなっていて、暗部は真っ黒くつぶれて階調が無くなっています。
「階調」の補正によって、色にも変化があることがわかるでしょうか。
そして、臨場感、立体感、奥行き、光感、メリハリ、ボリューム、質感、テクスチャーなど、写真尾の表現に大きく影響します。
カラー画像であってもモノクロ画像であっても、色調補正とは「階調」を補正することが原理で「基礎・基本」であることが解る例だと思います。
写真/画像【 色調補正の「基礎・基本」】
「色調補正」の基礎・基本を、簡潔に解説します。
写真/画像の色調は、明暗・濃淡の変化・段階である「階調」で再現されています。
すべての被写体の色や明暗・濃淡は、「階調」によって再現されています。
その「階調」は、下記のグレースケールで表すことができます。
「階調」を表すグレースケール
「グレースケール」とは、明暗・濃淡の変化を、白〜黒の「階調」で表しています。
上記のグレースケールには、右〜左へ、段階ごとに1番〜22番までのナンバーをふっています。
「階調」は、1番〜22番(右〜左)へと、段階的に濃く変化しています。
このグレースケールは、各段階の階調が適正に再現されています。
このグレースケールを「基準」として「色調補正」を考えていきます。
「基準」の階調を再現した、<グレースケール「基準」>
下記のグレースケールは、色調補正の失敗例をスケール化しました。
これを、グレースケール「失敗例 ① 」 とします。
グレースケール「失敗例 ① 」
グレースケール 「失敗例 ① 」 が色調補正に失敗している点は、
① 最も明るい段階、1番の白さと最も暗い段階、22番の黒さが弱くなっている
失敗と判断できる理由は、
階調、明暗の差にメリハリがないことです。
グレースケール「基準」のように、白〜黒までの階調の幅を最大に生かせていないことで、各段階の差が小さくなっています。
カラーの場合ですと、発色が弱く、くすみも発生している状態です。
写真/画像【 カラースケールで「基準」と「失敗例」を比較】
カラーのスケールで「基準」と「失敗例 」の発色への影響、違いを比較してみます。
カラーのスケールで「基準」と「失敗例 ① 」の、同様の状態を再現して比較しています。
下記は、赤のスケールで、グレースケール 「失敗例 ① 」と同様の状態を再現
下記は、赤のスケールで、グレースケール 「基準」と同様の状態を再現
下記は、緑のスケールで、グレースケール 「失敗例 ① 」と同様の状態を再現
下記は、緑のスケールで、グレースケール 「基準 」と同様の状態を再現
下記は、青のスケールで、グレースケール 「失敗例 ① 」と同様の状態を再現
下記は、青のスケールで、グレースケール 「基準」と同様の状態を再現
このように、適正でない階調の色調補正(明暗の色調補正)は、発色にマイナス方向へ影響することがわかります。
ということは、階調の色調補正(明暗の色調補正)が適正にできれば、発色はプラス方向へ働くことになります。
むやみに発色のみを追いかけた調整を行う前に、階調の色調補正(明暗の色調補正)が適正どうかを見直す方が道理にかなった方法であることを意味しています。
下記のグレースケールは、色調補正の「失敗例 ② 」です。
色調補正の失敗例、このグレースケールを 「失敗例 ② 」 とします。
グレースケール 「失敗例 ② 」 が色調補正に失敗している点は、
1番〜5番の明るい段階は飛んでいる訳ではなく、18番〜22番の暗い段階はつぶれている訳ではありません。1番〜5番、18番〜22番の階調の変化は失われフラットで、明暗・濃淡の差が判別できなくなっています。
実際の写真であった場合、被写体の1番〜5番、18番〜22番あたりの階調は失われているので、形、質感、テクスチャーは再現されていないことを意味しています。つまり、何が写っているのか見る人に伝わりづらい色調になっています。
色調補正とは、「階調」の明るいところから暗いところまでを<グレースケール「基準」>のように整えるということです。
<適正な色調補正を行った画像>と<適正でない色調補正を行った画像>の比較
3点のサンプル画像で、<適正な色調補正を行った画像>と<適正でない色調補正を行った画像>の色調、階調の違いを比較してみましょう。
サンプル画像-1
適正な色調補正を行った画像
適正でない色調補正を行った画像
サンプル画像-1 の比較
<適正な色調補正を行った画像>の色調は、花びら、茎、葉の明るいところから濃く暗いところまでの明暗・濃淡の変化、階調の再現ができていて、基本的な色調再現を実現しています。
<適正でない色調補正を行った画像>の色調は、花びらの明るいところのテクスチャーが無くなっていて、花びらの重なりが再現できていません。
また、濃い色がベタっぽく飽和した状態になっていて、花びら、茎、葉の色の明〜暗・淡〜濃の変化が滑らかでなく、急激に変化しています。
一見、鮮やかでキレイに見えますが、花びら、茎、葉の表情はこの写真を見る人には伝わりません。
サンプル画像-2
適正な色調補正を行った画像
適正でない色調補正を行った画像
サンプル画像-2 の比較
カワセミが石垣のステップにとまって、魚を狙っている写真です。
<適正な色調補正を行った画像>の色調は、カワセミの全身の再現、石垣とステップの明暗・濃淡の変化が自然な再現を実現しています。
<適正でない色調補正を行った画像>の色調は、カワセミの明るい部分、石垣とステップの白く明るい部分がとんでいて階調を失っています。
そして、階調の明〜暗・淡〜濃の変化が極端で不自然です。
また、暗く黒いところがつぶれてしまって、黒いかたまりのようになっています。
サンプル画像-3
適正な色調補正を行った画像
適正でない色調補正を行った画像
サンプル画像-3 の比較
<適正な色調補正を行った画像>の色調は、水の流れの白っぽい部分の明〜暗・淡〜濃の変化がきちんと再現できています。
また、暗く黒い部分がしっかり黒くしまっています。(つぶれてはいません。)
その結果、画像全体のメリハリ、コントラストがしっかり表現されています。
<適正でない色調補正を行った画像>の色調は、水の流れの白っぽい部分の明〜暗・淡〜濃は再現できていますが、暗く黒い部分がしっかり黒くしまっていないため、画像全体のメリハリ、コントラストが弱くなっています。
そのため、画像全体の色調、再現力も弱くなっています。
まとめ
色調補正とは、「階調」の補正を行うことが本質です。
「階調」の明るいところから暗いところまでを、<グレースケール「基準」>のように整えるということです。
これが、色調補正の原理、「基礎・基本」です。
上記で紹介した<適正でない色調補正を行った画像>の色調は、よく見かける色調補正の失敗例です。
RAWデータが記録している色調情報を最大に生かして、最大の再現力を実現する方法は、まず、色調補正の本質、「基礎・基本」を知ることです。
ぜひ、「基礎・基本」に則った本物のスキルを身につけていただきたいと思います。
※ 本稿の画像は、Adobe「Photoshop」を使って、色調補正、編集のすべてを行っています。
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